
YouTubeチャンネル「松竹シネマPLUSシアター」で2月15日まで無料公開となっている、「八つ墓村」(1977)を観ました。
2時間30分の作品ですが中弛み感なく、昭和の時代の日本映画の底力が伝わってく観応えのある作品でした。
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私が10代から20代になる頃、角川文庫から次々に横溝正史作品が刊行、そして、金田一耕助を石坂浩二さんが演じた角川映画、金田一耕助を古谷一行さんが演じたテレビドラマシリーズが制作されて、空前(?)の横溝ブームとなりました。
この頃、私は10作品以上の横溝作品を角川文庫で読みました。最初に読んだのは「本陣殺人事件」だったと思います。そして、最も好きな作品が「八つ墓村」でした。この作品で描かれる鍾乳洞の描写から、鍾乳洞の幻想的、神秘的な風景、空気感を想像することが出来て、想像の中の鍾乳洞に強く惹かれるものがありました。
因みに石坂浩二さん、古谷一行さんの演じる金田一耕助は、如何にも金田一耕助ですといった演出、演技が、とてもわざとらしい感じがして馴染むことが出来ず、テレビドラマ、角川映画ともに観る気にはなりませんでした。
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「八つ墓村」(1977)、公開当時のテレビCMの「祟りじゃ〜っ」のセリフ、山崎努さんが頭に2本の懐中電灯を巻き付け、日本刀と猟銃を持って村人を追いかけるシーンは今でも印象に残っています。
松竹映画が製作した「八つ墓村」、SNSなどで、横溝映画、金田一耕助映画の最高傑作と評されていて、是非、一度、観てみたいと思っていた次第です。
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「八つ墓村」では金田一耕助を渥美清さん、主人公の青年 寺田辰弥を “ ショーケン” 萩原健一さんが演じています。

出演する女優陣は、小川真由美さん、山本陽子さん、中野良子さん、昭和を彩る美人女優さんの競演です。私が高校生の頃から大好きな中野良子さん、透き通るような繊細な美しさには眼と心が奪われてしまいます。殺伐とした映画ですが、映像のなかの眩いほどに美しい中野良子さんを観ていると、心和む気分に浸ることができました。
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自分の出生の秘密を知ろうとすることで困難に巻き込まれ、苦悩する青年 寺田辰弥を演じる萩原健一さん、名演です。私は映画、テレビドラマのいずれでも、萩原健一さんの出演した作品を観たことが殆どありません。私にとっては今でも萩原健一さんは、テンプターズの “ ショーケン” のイメージが強いです。
唯一、記憶に残るテレビドラマが「課長サンの厄年」です。このドラマでのさりげない演技、私が抱いていたテンプターズの “ ショーケン” のイメージを払拭する役者としての演技が、今でも印象に残っています。そして、今回観た「八つ墓村」の演技、改めて萩原健一さんが素晴らしい役者さんであることを、強く認識しました。
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渥美清さん演じる金田一耕助、原作で描かれる金田一耕助像とは大きくかけ離れています。しかし、原作に忠実でない金田一耕助ゆえに、この映画のなかで金田一耕助が浮き上がることなく自然に溶け込んでいるという印象を受けました。
渥美清さんと言えば、勿論、寅さんですが、この映画のなかの渥美清さんは寅さんではなく、金田一耕助そのものです。淡々と言い含めるように、諭すように事件の謎を解き明かす語り口はさすが名優、国民的俳優ならではの演技だと思いました。
美しい昭和を彩る女優陣もさることながら、萩原健一さん、渥美清さんの名演が強く印象にのこった映画でした。
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原作で描かれる鍾乳洞の幻想的、神秘的な風景、空気感もこの映画からは伝わってきました。そして、この映画の音楽も昭和の原風景を感じさせて、映像の雰囲気によくマッチする素晴らしいものでした。
「八つ墓村」、YouTubeで視聴後にWikipediaで調べてみると過去には地上波で放映されていました。
スプラッター映画的な要素もある、かなり血腥いシーンのあるこの映画、今ではノーカットで地上波、BSで放映することは困難だと思います。
しかし、決して際物映画ではなく、真面目に制作された日本映画として、極めて完成度が高い作品だと思います。
私的に、とても素晴らしい映画でした。

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この記事へのコメント
よしあき・ギャラリー
中野良子さんのファンでした。
渥美清さんの金田一耕助は是非見てみたい!
mm
八つ墓村、名前はよく知っていますが観ていないです。
中野良子さんは、ちょっと変わった役を演じられることが多いと言う印象ですが、好きな女優さんです。
トモミ
an-kazu
驚愕したことを思い出します!
更に夜桜を見るたびに、
この作品を思い出します。
ironbridge
ゆかりの倉敷市真備町地区を歩くイベント「1000人の金田一耕助」https://www.sanyonews.jp/article/1481732 なるイベントが開催されています。
真備町地区は2018年7月、「晴れの国」岡山を襲った西日本豪雨の場所です。
青い森のヨッチン
渥美清さんの金田一役はあまり記憶になかったのですが角川映画ではなく松竹作品だったのですね(合点がいきました)
自分の世代はもう角川映画全盛期でしたけど八つ墓村って角川映画だとばかり思っていました。
当時はインパクトのある映画のCMはドリフで志村さんが良く真似していたなぁ
芝浦鉄親父
中野良子さん、これほど綺麗という言葉が似合う女優さんは、他には思い浮かばないです。
渥美清さんが、一味も二味も違う金田一耕助を演じている「八つ墓村」、是非、観てみてください。
芝浦鉄親父
1973年に放映された「さよなら今日は」(日テレ)、「国盗り物語」(NHK)を観て、高校2年だった私は中野良子さんの大ファンになりました。
10作品以上読んだ横溝作品のなかで、今でも印象に残っているのは「八つ墓村」だけです。
芝浦鉄親父
1970年代半ばの横溝ブームは凄かったですね。私の周りでも、新刊が出ると我先に読んでいました。
私が唯一、二度読んだ作品が「八つ墓村」でした。
芝浦鉄親父
「八つ墓村」のモチーフは津山事件(津山三十人殺し)ですね。京都アニメーション放火殺人事件までは最大の死者数を出した殺人事件です。
鬼と化した多治見要蔵が村人を殺しに夜桜の下を駆けるシーン、山崎努さんのまさに鬼気迫る演技は凄いです。
芝浦鉄親父
「1000人の金田一耕助」、こんなイベントがあるのですね。
全国から150人も集まるとは、横溝正史、金田一耕助の根強い人気がうかがえます。
因みに、「犬神家の一族」は私が3番目に読んだ横溝作品だったと思います。
芝浦鉄親父
角川映画は金田一耕助だけでなく一世を風靡しましたね。
寅さん以外を演じている渥美清さんをあまり見た記憶がないのですが、さすが大物俳優という存在感のある演技でした。
そらへい
すでに寅さんで一斉を風靡していた頃です。
でも、金田一耕助に挑戦されたんですね。
そして見事に演じられたのは凄いです。
渥美清さんはシリアスな役も行けるという証明ですね。
私は先代中村勘九郎と共演した「友情」という映画が
印象に残っています。
芝浦鉄親父
多くの人にとって、渥美清さん=寅さんのイメージがあると思います。
しかし、「八つ墓村」の渥美清さん、寅さんとは似ても似つかぬ金田一耕助を見事に演じています。流石です。
JUNKO
ゆう
広兼邸を遠目に見た時は、「おお~」と思いました。
芝浦鉄親父
渥美清さん、寅さんそのもののイメージがありますが、「八つ墓村」では全く違う顔をみせてくれます。今更ながら、凄い俳優だと認識させられました。
芝浦鉄親父
戴いたコメントを読んで、早速、岡山観光WEBで紹介されている広兼邸、満奇洞を見ました。
確かに広兼邸を眺めると、「おお~」となると思います。満奇洞も見てみたいです。
mitu
渥美清さんは、山田監督の映画では、警察官や獣医役等で登場して
良い味醸し出しておられますね「やつ墓村」図書館で借りて視てみますね^^
芝浦鉄親父
「八つ墓村」、スプラッター映画的な要素もある、かなり血腥い映画なので、そういう映画に抵抗がある人にはお勧めできません。
特に抵抗がなければ、ご覧になってみてください。。。
老年蛇銘多親父(HM-Oyaji)
特に、横溝作品に惹かれたのは、今の日本人が忘れてしまった日本の原風景・心が感じられたこと。
記事を見させていて、映画「八墓村」、また見たくなってしまいました。
芝浦鉄親父
横溝作品、おっしゃる通り、おどろおどろしさの中に日本の原風景を感じることができますね。
「八つ墓村」の映像の中に展開する風景を観ていると、何か心和む気がします。
英ちゃん
東小金井駅構内に停車してたのを電車の中から見ただけですが。
いよいよ、グリーン車付の電車もデビューしそうですね。
まぁ、1回は乗ってみたいと思います。
芝浦鉄親父
中央線快速のグリーン車の営業開始は2024年度末の予定ですね。
営業開始前に順次、編成に組み込まれていくのではないかと思っています。営業開始前はグリーン料金なしで開放するのかも知れませんね。
sana
横溝正史の本は、私も10作ぐらい読んだと思います。
映画やドラマも、テレビ放映したものは大抵見たような気がします。
渥美清さんの金田一耕助は覚えがありません。寅さんのイメージに吸収されてしまったのかも‥
中野良子さんは、綺麗な方でしたね。声も素敵でした。
芝浦鉄親父
寅さんのイメージが強すぎる渥美清さん演じる金田一耕助、とても自然な感じがして映画に溶け込んでいます。
中野良子さん、声も美人さんですね。
「八つ墓村」、無料公開の期間中にもう一度観ようと思います。
とらさん
年かもしれませんが、昔の映画は哀愁があったような気がします。
芝浦鉄親父
おっしゃる通り、昔の映画は日本映画、洋画を問わず、哀愁が感じられ趣がありましたね。
現代の映画は映像は綺麗ですが、無機質さを感じる作品が多いです。
トータン
小説を読んでいると 私は金田一耕助さんは 故常田富士夫さんがピッタリな感じがしていたのですが ありえませんでしたね 本陣殺人事件の時に三つ指の男として演じていましたが その時小説の金田一耕助のような気がしていましたが 中尾彬さんでしたね(^^
芝浦鉄親父
おっしゃる通り、原作を読んでイメージする金田一耕助に常田富士男さんはピッタリのような気がします。
常田富士男さん、「ゲバゲバ90分」、「まんが日本昔ばなし」が印象深いです。
yokomi
芝浦鉄親父
「八つ墓村」(1977)の洞窟のロケ地には、岩手県の滝観洞、岡山県の満奇洞ほか、全国各地の鍾乳洞が使われてますね。
渥美清さん演じる金田一耕助、さすがの演技でした。